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最高裁判所第二小法廷 昭和57年(あ)401号 決定 1982年10月06日

本籍

静岡県清水市辻三丁目五一二番地

住居

同県清水市辻三丁目三番四号

会社役員

尾関義雄

大正一五年一月一九日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、昭和五七年二月三日東京高等裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から上告の申出があったので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人今村嗣夫の上告趣意のうち、憲法三一条違反をいう点は、所得税法二三八条二項にいう「情状により」の意義が所論のように不明確であるとは認められないから、所論は前提を欠き、その余は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

よって、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 牧圭次 裁判官 木下忠良 裁判官 藍野宜慶 裁判官 宮崎梧一 裁判官 大橋進)

○ 昭和五七年(あ)第四〇一号

上告趣意書

被告人 尾関義雄

右の者に対する所得税法違反被告事件について上告趣意は次のとおりである。

昭和五七年六月二三日

弁護人 今村嗣夫

最高裁判所第二小法廷 御中

第一点 原判決は、これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められ、判決に影響を及ぼすべき重大なる事実の誤認がある。

一 所得税ほ脱の犯意の事実誤認

1 個人事業主の間には、所得税の申告に当り、いわゆる白色申告をなすものと被告人のような青色申告をなすものとがある。

ところで徴税側にすれば、帳簿書類の備付記帳義務のない白色申告者よりも帳簿記録にもとづく課税資料の捕捉・収集、つまり課税に便宜な青色申告者が増加することが望ましいことは白明である。そこで全国各地の所轄税務署は、白色申告者に対し、青色申告をすることによって受けられる税法上の特典を教示し、青色申告承認の手続をなすよう奨励し、また中小企業経営者の間に青色申告を普及することを目的とする青色申告会の育成を図っていることは一般に顕著な事実である。

このような状況の下で増加してきた青色申告者、とりわけ企業体としての組織が貧弱で元帳の記帳はじめ毎月の試算表の作成、年度末決算までなしうる経理担当者を常時雇用できず、ワンマン経営のため早朝より長時間労働を余儀なくされるため常時経理監査をなす時間的余裕もなく(被告人の二審供述)、またその能力も充分でない個人事業主の間に、青色申告者としての充分な資質を欠き、とりわけ青色申告と白色申告との税務行政上の取扱の差等に無理解な者を輩出するのは自然の成行である。

本件の被告人も、青色申告者は専従者控除などの特典を受ける代りに、厳正な記帳の結果にもとづく所得計算による申告をなしうるよう常時記帳に注意を払う法的義務を負担しているのであって、推計による申告をなすことは許されていないことを真に認識しておらず、例年の所得税の確定申告に当って、自己の従業員や依頼税理士或は堀川ふみ江による記帳の結果を資料にしながらも自己が確知している当該年度内に発した貸倒や取引先企業の現場監督に対し業界慣行上支払う飲食代などを確保するための売上げの水増しなどを考慮し、恰も白色申告者の如き推計による申告をなしていたものである。ちなみに、白色申告の場合には、記帳が不完全であるとか、原始書類が散逸しているときなど、税務職員の行なう所得標準率表による推計課税や業種別の統計による前年比所得増の割合などにもとづく行政指導によって算出した税額を納付させるという税務行政上の取扱いがなされていること一般である。

被告人は本件公訴事実第一及び第二の昭和四八年度及び昭和四九年度の各所得税確定申告にかかる事業所得の算出に当り、帳簿にもとづく堀川ふみ江作成の決算書が実状と異なると実感しこれによらず、昭和四八年分については売上をもととしてその五%(業界水準)を純利益=所得と推計し、なお前年比所得二割増を所得とする推計額と比照し(被告人の一審供述)、また昭和四九年度分については前年比所得二割増を所得と推計しこれらによって各申告所得を算出しているのである(被告人の各供述調書。収税官吏の被告人に対する各質問てん末書)。

先にも触れたように、被告人が白色申告者であれば、決算書上の所得が実状に合致しないと思料し、しかも正確な所得実額を把握するためのすべての計数を明確になしえないのであれば、或は左の如き合理的推計方法により算出した所得を申告することも(その結果の当否は別として)その申告方法自体を不正不当と断ずることはできないであろう。被告人は、かかる推計による申告をなし「右推計による所得金額なら税務署の心証も悪くなく所得金額として認めてもらえると思った」「帳簿類を改ざんしようというようなことまでは考えませんでした」(昭和五一年一二月三日付被告人の検面調書)と述べているのであるが被告人のこのような意識はまさに白色申告者の意識そのものである。被告人が若し青色申告者は白色申告者と異り、推計による申告はそれが合理的なものでも許されず、申告にかかる所得算定根拠をすべて帳簿及び伝票等の会計書類によって明らかにする義務があることを真に理解していたならば、常時、会計監査に注意を払い申告間際にかかる推計に及ぶことはなかったであろうと思料する。

2 原判決は被告人の所得税ほ脱の犯意を認定するにあたって、収税官吏の被告人に対する各質問てん末書等を比照して次のように判示している。

すなわち、被告人は昭和五一年二月二日、名古屋国税局係官から、それまでの調査の結果判明した本件で審判の対象となっている各年分及びその前年分の所得金額及び所得税額並びに重加算税並びに県民税及び市民税等の地方税の各概数額について知らされてから(重加算税以下は同日には知らされていない)、所得税ほ税の犯意を否認するに至ったので、その時までの間(同国税局による調査が開始された昭和五〇年九月から調査が収束段階にはいった翌五一年二月頃までの間)は、被告人は所得税ほ脱の意思で、堀川ふみ江に対し前認定のような指示に及んだことを自認していた、というのである。

しかしながら、右は事実誤認である。前述のとおり被告人は青色申告者であるのに法定帳簿書類にもとづかず恰も白色申告者の如く自己の推計による所得の申告に及んだものでありこの点はやはり非難されなければならず、被告人自身もこのことは反省し捜査段階でも自認してはいるが、被告人は決してほ脱の犯意を自認していたわけではない。

被告人は同年二月一四日、所得税の外に重加算税も課せられることを知らされたが、その意味がわからず、東海銀行清水支店の水谷支店長および山内税理士に重加算税が課せられる理由についてたずねたところ「帳簿をごまかす犯意(帳面をごまかして申告所得を少くするという考え方)、すなわち帳簿をごまかすことについての仮装隠ぺいがあるとみなされた場合重加算税がかかる。」といわれた。そこで被告人は「私は営業に関する伝票、帳簿については、真実の取引を記帳して仮装隠ぺいはしてなかったので重加の対象にならないと考え」同月二五日、国税局係官に電話をし「重加算税を課せられることについて納得がいかない」旨を申し入れているのである(昭和五一年三月三日付収税官吏の被告人に対する質問てん末書)。

被告人は本税(所得税)については過少申告であったとする調査結果に合わせた修正申告をなし自己の従前の申告額との開差分を納付することを既に決めていたが、右の如く「仮装隠ぺい」ありとして重加算税を課せられることには承服しなかったのである(同質問てん末書)。

右の経緯から明らかなように被告人は帳簿書類の「仮装隠ぺい」をこれまで自認する筈はなく、その後も一貫してこれを否認しているのである。

原判決が挙示する質問てん末書のうち前記昭和五一年二月二日以前の日付である昭和五〇年九月一二日付質問てん末書の記載も被告人が堀川に指示したのは被告人の推計にかかる「所得金額」だけである。同年一二月一一日付質問てん末書にも被告人は、元帳のことは堀川にまかせていたのでくわしいことは知らない旨の記載がある。もっとも、被告人が売上や仕入れについて具体的な金額を堀川に指示した旨の記載もあるが、「具体的な金額」とはいうものの極めて抽象的な記載であり指示した費用や金額が具体的に特定されているわけでもなく、係官の作文という外はない。

既に明らかなように被告人が昭和五一年二月頃までの間は所得税ほ脱の意思で、堀川ふみ江に対し「仮装隠ぺい」の具体的方法を指示したことを自認していた旨の原判決の認定は明らかな事実誤認である。

3 原判決は被告人の申告所得金額が実際所得金額に比し著しく少額であること、昭和四八年分のときには決算の内容について堀川に問い質したりして決算の誤りの有無について検討を加えたりしないままに当該申告所得金額の概数を示したことを「犯意」の徴憑としている。しかしながら、被告人は従業員や堀川の作成する資料の売上金額などをもとにして前記推計による所得金額を申告すれば足りると白色申告者の如き考えでいたのである。申告の時点で原判決判示の実際所得金額を認識していてその一五%ないし二五%に満たない額をことさらに申告したわけでもない。調査結果により被告人は初めて自らの申告が著しく過少であったことを知らされたのであり、右開差が生じてしまったのは、被告人が当時の異常な経済変動に伴う被告人の事業の業績の変化を的確に認識することができなかったことによるものであることが看過されてはならない。

4 原判決は被告人に経理事務等についてかなりの理解力を有している旨認定している。しかしながら若し原判決のいうような理解力があるとすれば帳簿書類の辻つまを合わせてもよさそうなものであるが被告人は全くそのようなことは考えていなかったのである(一審供述)。前年比所得の伸び率や売上に対する利益率をみたり売上から経費を差し引いたものが所得であること、貸倒金は経費にして貰えること或は製造原価を幾らとみるかということなどは経理事務等についての特別の理解力がなくとも一般の事業経営者なら誰でも知悉していることであろう。被告人が右の事項を知っていたことを以って簿記会計について相当な知識があるとしこれをほ脱の犯意があったことの一徴憑とみるのは不当である。

5 原判決は堀川ふみ江が決算書類上の金額の操作方法についてまで被告人に指示された旨の証言を重視しているが、同女は自己が税理士でなく無資格者であるうえ、共犯の疑いをかけられるのを避けようとする心理状態から総てを被告人の責に帰する証言をなすに至ったことは容易に見抜けるところである。

6 原判決は昭和四八年分の申告に関する被告人の税務署員への調査の申し出及びその調査の事実を軽視しているが事実誤認も甚しい。この税務調査は堀川証言によっても明らかなとおり「売上帳その他の補助簿全部」について「もう幾日もかかって」行われたものである。鶴見らが調査続行の必要を感じながらこれを推進しなかった税務署側の内部事情は知る由もないが、被告人にしてみれば右の税務署の態度から当該年度の申告は承認されたものと受け取っていたのである。

既に明らかなとおり被告人の「犯意」に関する原判決の事実誤認は重大である。

二 偽りその他不正の行為の事実誤認

1 「偽りその他不正の行為」として検察官が指摘する所為は客観的にほ脱の手段と評価することはできない単純なものである。

右所為は総て堀川によって行われたものであるが、同人は青色申告には決算書の添付を当然としていたことから、同人自身において既に作成済みの振替伝票、元帳、決算書の数字を被告人の推計による申告所得金額に相応するように形式的に合わせて申告する外ないと考え、売上、仕入等の書き直しを思いつくままに単純素朴に行ったものである。<1>その書き直しの筆記具は鉛筆であり<2>抹消前の数字が判読できたり<3>修正前の数字を「実」の符号を付して元帳欄外に記したりしているのである。

堀川によると右の処理は被告人不知の間に行われたものであるが、何人の目にも修正の痕跡が明らかな右の如き処理をほ脱の故意ある者の所為とみることは到底できない。

2 堀川が作成していた振替伝票及び元帳のもととなった被告人の従業員作成の原始書類や補助簿はそのままであること、得意先と示し合せて売上圧縮や経費の水増をしているわけではなく、二重帳簿を作成しているのでもない。

3 検察官指摘の架空売上、架空仕入等はほ脱の目的ではない他の特段の目的のための経理処理・記帳方法であり、かつ、その結果は過少申告とは無縁である(二審第一~二回被告人調書)。

4 いわゆる隠匿財産はない。被告人個人の用に供する金員の収支(奥の収支)と店の収支とは区別されていて当該年度の事業収入を個人の遊興費などに当て或は隠匿したりしてはいない。(一審記録第二冊一〇五五丁「上申書」。当局の反面調査により収集された資料に基いて税理士が作成した「公表外の収支計算」参照)。

5 原判決は本件各年分の各所得税確定申告書及び添付書類が所得税のほ脱を企画した被告人の意思に基づき作成、提出されたとの事実認定を前提として、同申告書等を作成、提出する行為が、本件各ほ脱所得金額及びほ脱所得額とそれぞれ因果関係のある不正の行為にあたると判示している。

しかしながら右前提事実は前記のとおり事実誤認にもとづくものであり、また所得税確定申告書の作成、提出前の段階における前記各事実、いわゆる申告過程の過失などの問題を不問に伏していること、ほ脱額などの検討もなされていないことは責任主義の原則に反するものと思料する。

原判決の偽りその他不正の行為の認定にも重大な事実誤認があることは明らかである。

第二点 原判決には憲法の違反があり、その違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであり、原判決は破棄されなければならない。

所得税法第二三八条第一項は、ほ脱犯の罰金刑を五百万円以下と定めているが、同条二項は免れた所得税の額が五百万円をこえるほ脱犯について、「情状により」その免れた所得税額に相当する金額の罰金を科することができる旨定めている。

刑の軽減事由或は再度の執行猶予など行為者にとって有利なものについては格別、このような行為者に重大な不利益をおよぼす大幅な刑の加重を「情状により」というような明確さを欠く要件にかからしめている同条同項は、憲法第三一条の適正手続の保障に違反し無効であるのに、原判決は同条項を適用している。

同条二項は刑の加重事由を定めた規定ではなく、同条一項と相まって法定刑の幅を定めた規定に過ぎないと解する原判決の解釈は正鵠を射たものではない。蓋し、法定刑の幅を定めるのであれば一、二項に分けて規定しなければならない理由はなく、また特に「情状により」の文言を定めることもなかったと解せられるからである。

付言すれば、刑法はあらゆる犯罪について法律上の減刑の外に裁判上の減刑(酌量減軽)を定めているが、右に対応する裁判上の刑の加重ということは認めていない。法定刑またはこれに修正を加えた処断刑の最高限をもってしても、犯罪の具体的状況ないし犯人の主観的事情からみてなお軽きに失するという場合であっても、裁判官の裁量による刑の加重を認めることは適正手続の保証を侵害するものと解せられるからであろう。所得税法二三八条二項は同項の「情状により」の文言上も、一項との対比によっても一種の裁判上の刑の加重を大幅に認めたものであり、このような規定は憲法三一条に違反するものと解する。

第三点 原判決には法令の違反があり、その違反が判決に影響を及ぼすことは明らかであり、原判決は破棄されなければならない。

一、被告人が仮に有罪としても、被告人には所得税法二三八条二項に規定するような「情状」は後記第四点の如く存せず同条一項を適用すべきであるのに、原判決は同「情状」の存在を肯定し同条項を適用している。

二、原判決は所得税法二三八条二項を適用するに当り、行為者に重大な不利益をおよぼす大幅な刑の加重要件たる同条同項の「情状」にあたる事実について理由中においてこれを挙示していない。

思うに判決に理由を付することが要求されるのは、一には裁判所の恣意を防止する保障機能を営ませるためであり(罪刑法定主義と証拠裁判主義を判決自体において保障するもの)、一には当事者が上訴し、上訴裁判所が原判決を審判するための資料を提供するにあると解されるのであって、右の制度趣旨に照らし行為者に重大な不利益を与える所得税法二三八条二項適用の要件である「情状」にあたる事実については、裁判所はこれを理由中に判示すべき義務があるといわざるを得ない。

第四点 原判決の刑の量定が甚しく不当であって、これを破棄しなければ著しく正義に反することを認める事由がある。

一、被告人は既に修正申告により昭和四八、四九年分調査実額全額一億四二七〇万二〇〇〇円を納付しているうえ過少申告加算税及び重加算税合計三一七三万二二〇〇円の賦課決定を受けている。このうえ更に原判決の量刑罰金三〇〇〇万円を併科することは、被告人が修正申告により当該税額を速やかに納付したことに照らしても余りにも苛酷であり、中小企業の個人事業主に対するこのような苛酷な制裁はかえって国民感情に反するものと思料する。

二、被告人は帳簿類はかなり正確に記帳しており、一部架空売上、架空仕入などが見受けられるが、これは被告人の業界の風習から余儀なくされた経理処理であって無理からぬことでもありまたこれらの所為によって被告人は類型的ほ脱犯人のように「資産の隠匿」をなしたものではない。

三、また仮に被告人が堀川による帳簿書類の書き直しを容認していたとしてもそれは極く一部であり、しかも改ざんと評価する程の操作ではなく、加筆したことが一見して明らかな方法で鉛筆書きしてあり、そのうえ元帳欄外には「実」「帳」「差」などの記号で覚書をしているのであって類型的ほ脱犯とは到底いいえない。

四、被告人には更正、取消処分(本件の如き多額な過少申告)の前歴は勿論、ほ脱の前歴はない。

五、著しく高額な本件ほ脱の結果は被告人がことさらな悪意を以って計画的に発生せしめたものではない。即ち被告人は、昭和四七年七月、一〇年以前からの依頼税理士であった堀川勘次郎が死亡したことから、同人から生前頼まれていたこともあって、その娘堀川ふみ江に本件各年度の税務会計を依頼するようになったもののふみ江には税理士資格がなかったこと及び昭和四八年末のオイルショックによる経済変動を機とする生コン販売単価の上昇及びこの時期における被告人の企業の体質が業界において比類のない優良企業であったことの相乗効果によって、該各年度の被告人の事業の業績変化率が被告人の予想を遥かに越えていたのに、被告人にはこれを正確に把握する能力が欠けていたことから、被告人は堀川ふみ江作成の帳簿にもとづく算出所得金額が実状に合致せず信用できないと実感した。かくて被告人は自己の推計にもとづく事業所得金額を以って本件各所得税確定申告に及んだもので、その犯情を重くみることは酷であるというべきである。

六、被告人は青色申告者であるのに法定帳簿書類にもとづかず自己の推計による所得の申告に及んだものであり、この点はやはり非難されなければならないが、被告人は昭和四八年度の右申告の当否について天野統括官をはじめとする税務職員の判断を求めるため法定の帳簿書類の一切を開示し、同職員は幾日もかけてこれを閲覧し、その結果修正申告書の下書を作成交付し以って修正申告を指示したので、被告人は自己の申告が是認されたものと考え、翌四九年度も同様の方法で申告に及んだものであり、このような経緯を全く無視してその犯情を重くみるのは酷である。右税務職員の態度が被告人の税務職員に対する過度の信頼を生み、本件ほ脱の結果を発生せしめたといいうるのである。

以上の諸点に照らし原判決は破棄を免かれないものと信ずる。

以上

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